ホワイトボードで上手に議論をリードする日本のビジネスパーソンは、リモートワークで消えてしまう? リモートワークでも議論できる組織にするためのDXとPPM分析入門
公開日 2022年3月28日 最終更新日 2024年9月12日
この記事は、こちらの英語の記事を元に執筆しています。この記事でご紹介するMiroのテンプレート:BCGマトリックスhttps://miro.com/templates/bcg-matrix/
コロナ禍以前から、上意下達の組織は腹落ち力が弱み
働く人の意識が変わりつつある
私たちがコロナ禍を経験して以降、多くの人が自らの「働きがい」を見直しはじめています。この「マインドセットの変化」はオフィス勤務に人が戻り始めても戻ることはないでしょう。米国で話題になった「静かなる退職(Quiet Quitting)」も、そのような生き方への心境の変化の現れかもしれません。一方、職場に「働きがい」を見いだせるのであれば、人生を賭けてでも力を尽くしたいと感じることもあるはずです。
働きがいや生きがいは、ビジョンやミッションが形骸化して感じられたり、「一方的に伝えられる」ことの意義や意図が腹落ちできないものであれば、感じることは難しいでしょう。変化の早い時代に柔軟に意思決定し行動に移せる組織体になるには、例えばPPM分析のような市場や事業について考えるようなフレームワークであっても、限られた経営陣だけでなく現場のメンバーが自ら使うような仕事のスタイルに変えていくことが求められます。
PPM分析のような課題解決や意思決定のためのフレームワークは、会議室のホワイトボードにささっと四象限を書いてワイワイと話し合うこともあると思います。従って、これまでは
- PPM分析のフレームワークが頭に入っていること
- 議論をリードしてホワイトボードで分析を進められること
が優れたビジネスパーソンのスキルセットと受け止められてきたはずですが、コロナ禍によるリモートワークの浸透で「オンラインホワイトボードテクノロジー」は大きな脚光を浴び、さらに生成AIが急速に浸透することによって、それらのスキルセットはデジタルツールのリテラシーによるものに置き換えられつつあります。
- オンラインホワイトボードテクノロジーを使いこなせること
- PPM分析を適切な場面で適用できること
- PPM分析のテンプレートをデジタルツール上で呼び出せること
- デジタルツールでファシリテーションを進められること
- AIを活用することで会議の生産性を向上させられること
などが、これからの時代で必要なスキルセットだと考えられます。
出社日数を増やすことでなにを変えたいか?
コロナ禍でリモートワークが浸透する以前から上意下達な組織風土では、戦略が現場の戦術レベルに落ちていくにつれて腹落ちが弱まってしまうことがありました。
「プレゼンで決まった方針を話すだけでは、経緯や思いが伝わりきらず腹落ちできないのではないか。」
「もっと社員の力をひとつに寄せる必要がある。」
「リモートワークではイノベーションが起きない。」
「社員のエンゲージメントが落ちている。」
その解を「出社日数を増やす」ことに求める企業もあります。以前に戻ることで、何を解決したいでしょうか。生産年齢人口が減少し続けている日本で、以前までの働き方のスタイルに戻すことは得策といえるでしょうか。対面での上意下達がうまくワークしていた組織ほど「一方的に伝える」効率や腹落ち感が減ることに着目してしまいがちですが、「働き方のスタイル」は対面かリモートかのように二項で捉えずに、「これからどのような仕事の進め方をすると社会に速く優れた価値を届けられるのか」、コロナ禍以前からの問いに改めて立ち戻ることが大切です。
問うにあたって近年で起こった見逃せない変化が、働くためのツールの進化です。「早く社会に価値を届ける」手法として、「アジャイル」や「リーン」といった日本がルーツといわれる仕事の進め方が注目を浴びてきましたが、そのような進め方に最適だと言われているのが「オンラインホワイトボードテクノロジー」です。今までのオフィス製品は「全員が参加する」ことを最重要視していませんが、「オンラインホワイトボードテクノロジー」は、会議室のホワイトボードと同じく、その場にいる人々を巻き込み、全員参加を目指すプラットフォームです。働き方の柔軟性を考えるときには、デジタルツールの変化や採用についての検討は欠かせません。
日本企業が見落としている会議室の図解とまとめの力のDX
オフィスの壁をホワイトボードにしている企業もあります。なぜ企業にとって従業員の雑談が大切なのか?それはコーヒーカップを片手に「こうだよね?」と、すぐに仕事に発展させられるからではないでしょうか。想像するのは、全員がオーナーシップを持って「ああでもない、こうでもない」と悩む「わいがや」の雰囲気です。
オンラインホワイトボードテクノロジーのパイオニアであるMiroは世界の名だたる企業で採用され、ときに国境を越えて優秀な人材を現地にいるまま採用し、年に数えるほどしか顔を合わせないような働き方を支えています。また、生成AIの実装などで「イノベーションワークスペース」として、まさに「会議室そのもの」さらに「働く場」となっています。日本でも、働き方改革のはしらのひとつである「働く場所の柔軟性」はコロナ禍により急速に浸透しました。その日にたまたまリモートワークしている人を置き去りにせず、柔軟に優秀な人材を獲得するにはホワイトボードのデジタル化と、スキルセットの更新は欠かせません。
どの企業にもおそらくひとつはあるホワイトボードがデジタル化されないのが考えてみれば不思議なことですが、デジタル化することで飛躍的に仕事の進め方を変えられるのもオンラインホワイトボードテクノロジーの魅力です。
そのためホワイトボードのデジタル化が進んでいる米国では、「オンラインホワイトボード」ではなく「コラボレーションホワイトボード」、Miroのような製品はG2でも「ビジュアルコラボレーションプラットフォーム」と位置づけられています。そのなかでもリーディングプロダクトであるMiroは、組織変革を進めるための機能の実装に注力し、「イノベーションワークスペース」に進化を遂げています。
日本でも、コロナ禍にもかかわらずプロジェクトの工数を削減するなどMiroで成功する事例が出てきていましたが、近年ではさらに「もっと優れたアイディアを出したい」「バリューストリームマッピングで組織改善や生産性向上を進めたい」といった、次の社会的価値の創造に現場レベルで利用されるツールになっています。
なによりデジタル化しないと、会議時間は増え、「情報の非対称性」が止まらない
特にMiroはアジャイル開発では「なくてはならないもの」になりつつあります。
アジャイル現場の現場は「透明性」を大切にしており、ホワイトボードに付箋で進捗を貼り付け、全ての事柄をチームで共有します。「それはエンジニアだけの特殊な話だろう。」と思われるかもしれませんが、それは間違いです。「ソフトウェア化する世界」という言葉がありますが、PMF(プロダクトマーケットフィット)のように市場の動きに敏捷に合わせていく戦略を採用し、営業、マーケティング、プロダクトマネージャー、カスタマーサクセスなど様々な縦や斜めの組織とも連携して事業を組み立てることは、もはや異世界の話ではありません。
市場の動きに敏感に反応するには、それぞれがオーナーシップを持って議論し物事を執行していく必要があるので、Liveで齟齬なく議論が進む、履歴が残ることが重視されます。
オンラインでもスムーズに議論を~PPM分析を事例に
ここからはPPM分析のおさらいをしながら、Miroでの議論の進め方がどのようなものか、ご紹介していきます。
PPM分析の目的
PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析はBCG Matrix、Growth Share Matrxとも呼ばれ、1968年にボストン コンサルティング グループの創設者によって開発されたフレームワークです。組織においてこの分析を行う目的は、事業もしくはプロダクトの収益性を関係者がひとめで俯瞰できるようにし、経営資源をどのように分配していくべきか決断できるようにすることにあります。
PPM分析とは?
この分析は、4象限のバブルチャートで表現されます。市場成長率と相対的な市場シェアの縦横の2軸に基づき、花形(Stars)、金のなる木(Cach Cows)、問題児(Question marks)、負け犬(Dogs)の4つの象限を作ります。
そこに、売上高などをバブルの大きさで表現した事業をマッピングしていきます。
以下が、それぞれの定義です。
軸 | 定義 |
---|---|
相対的な市場シェア | 最大の競合他社と比較しての市場シェア |
市場成長率 | 特定の市場規模が、前年と比較して成長する速度 |
象限 | 定義 |
---|---|
花形(Stars) | 高成長市場で高いシェアを得ている事業 |
金のなる木(Cach Cows) | 成熟した市場で高いシェアを得ている事業 |
問題児(Question marks) | 高成長市場にはあるが、シェアが低い事業 |
負け犬(Dogs) | 成長率が低い市場であり、シェアも低い事業 |
PPM分析でできること
PPM分析でできることは、事業が置かれている市場の将来性と、自社の事業が市場においてどれくらい機能しているのかを簡単にマッピングすることです。
PPM分析の象限と典型的な戦略方針
下図はPPM分析を視覚的に表したものです。アイコンの下は、決断の参考となる典型的な戦略方針です。
表にまとめると、以下のようになります。
象限 | 説明 | 典型的な戦略方針 |
---|---|---|
花形(Stars) | 高成長市場で高いシェアを得ている事業 | 市場の成長に合わせて投資し、シェアを強固に。 |
金のなる木(Cach Cows) | 成熟した市場で高いシェアを得ている事業 | 投資を抑え、花形と問題児の資金源に。 |
問題児(Question marks) | 高成長市場にはあるが、シェアが低い事業 | 市場の成長に見合う追加投資をするか撤退するかを見極める。 |
負け犬(Dogs) | 成長率が低い市場であり、シェアも低い事業 | 将来性に乏しいため撤退を検討すべき。 |
PPM分析の例題を解いてみる
それでは実際に、Miroを活用して例題を実践してみます。
PPM分析は60年代~70年代に製造業の製品ラインを管理するために作成されたものですが、事業ドメインは問いません。将来性が低いプロダクトに過剰投資することなどがないよう役立てることができます。尚、数値分析については、ExcelやGoogle Sheetなどの表計算ソフトをお使いください。Miroボードには簡単にデータを反映することができます。
分析する
下表は、PPM分析に必要な数値を含んだ架空の事業リストです。相対的な市場シェアと市場成長率の大小で、どの象限に分類されるかが決まります。
事業 | 売上高 | 最大の競合他社の市場シェア率 | 自社の事業シェア率 | 相対的な市場シェア | 市場成長率 | 象限 |
---|---|---|---|---|---|---|
事業A | 500万 | 60% | 30% | 0.5(大 | 3%(小 | 金のなる木 |
事業B | 350万 | 30% | 5% | 0.17(小 | 2%(小 | 負け犬 |
事業C | 250万 | 33% | 54% | 1.6(大 | 30%(大 | 花形 |
事業D | 50万 | 10% | 1% | 0.1(小 | 16%(大 | 問題児 |
市場シェアが分からないときは?
相対的な市場シェアは、以下のような計算式で簡易的に求めることができます。市場シェアの調査が難しい場合には、競合他社の決算資料などから収益額を調査してみてください。
手順
- (お使いの表計算ソフトで)最大の競合他社の市場シェア率と自社の事業シェア率から相対的な市場シェアを割り出します。
- (Miroボードで)それぞれの市場成長率と掛け合わせた大小を判断し、それぞれの象限にマッピングしていきます。その際、事業A~Dのおおよその売上高は図形の大きさで表すとよいでしょう。
元データは使い慣れた表計算ソフトに保持したままで構いませんので、4象限にプロットするところはMiroのPPM分析(BCGマトリックステンプレート)を利用して行います。まずはひとつの図で俯瞰できるようにすることで、関係者が話し合う前提を整えることができます。
PPM分析に限らず、標準テンプレートやユーザ企業がコミュニティで提供するテンプレートMiroverseを活用して、何クリックかですぐにビジネスに有用なフレームを検索・活用できるのがMiroの利点です。
以下のように、例題をMiroのBCGマトリックステンプレートにプロットしました。
オリジナルのBCGマトリックスのテンプレートでは横長の付箋が利用されていますが、付箋を選択すると表示されるメニューから簡単にバブルのような丸に変更することができますし、大きさも保持されます。
↓
データの一元管理と反映ができる
元データについてはGoogle SheetsのURLを貼り付けただけでMiroのボードから閲覧や再編集を行うことができます。また、Excelをドラッグ&ドロップでアップロードすることもできますので、データを見ながら、右側のテンプレート上に簡単に書き込んでいくことができます。
画面を切り替えるオーバーヘッドがない
さらに、計算シートと書き込むテンプレートとともに、PPM分析フレームワークのモデル(この記事の画像をコピー&ペースト)を貼り付けておくだけで、画面を切り替えることなく要領よく作業することができます。
Miroで議論を進める
この例では、事業Bの売上高は全体の2番目ですが、PPM分析においては市場成長率が低い点を考えないとまずい「負け犬」であることが分かります。
リソースが有限であることを鑑みると負け犬である事業Bは撤収して、問題児や花形に集中してもいいのかもしれません。もしこれらの事業の当事者であれば、PPM分析からとるべき施策や課題について多くのアイディアを出せるはずです。「もしかすると負け犬の事業Bと問題児の事業Dを融合すると、イノベーションになるのではないか?」といったことは、こうした図式化で隣り合わせにしてみて初めて発想できることがあります。
誰も議事録を書く必要がない
Miroであればひとつのボードに出席者が全員でアクセスし、直感的な操作で書き込むことができます。この会議では、事業Bの撤退について、想定インパクトを推測してみることに決めました。影響が及びそうなステークホルダーや要素、判断に必要なシミュレーションを誰がいつまでに行うか、途中の進捗確認をいつ行うか、次回会議はいつ誰が進行するか、などを書き込んでいきます。
よくある議事録のように縦書きでリスト形式などで書き込んでいくと、個々のアイテムの関連性が途切れてしまうため次の発想が出なかったり、まとめてやったほうが効率がいい社内調整などが見えにくかったりします。ですが、ボードに書き込んでいくと、例えば考慮アイテムを社内外に分けるのか、担当部署で分けるのか、など視覚的に次のステップをグルーピングしたり色分けしたりしやすくなります。
手書きの手帳やノートでこのような発想術をお使いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。Miroはいわば、それを複数人のコラボレーションで実現するデジタルツールです。一回の会議で以前より多くのことが決まるようになったという声もあります。
会議回数は減らしても、非同期で作業とコミュニケーションは続ける
コロナ禍以降、世界的に会議時間が増えています。こまめな進捗確認や様子伺いなどで一度増えてしまった会議時間は、意思を持って進めないと削減していくのは難しいでしょう。
Miroの場合は、会議中の理解を促進するだけの同期的な使い方だけではなく、会議が終わってからもコメント機能を使って簡単な会話をしたり、ブレストやTo do管理を行うことができるので、非同期でのコミュニケーションも可能です。コメントはどの部分を指しているかを明確にできるため、音声での表現よりぐっと齟齬を減らすことができます。
作業完了も簡単に明確に
コメントについては左上部にあるトグルスイッチを切り替えることによって、解決済みであるかも表現することができます。些末な確認事項は全てボード上で履歴も含めて表現することができるでしょう。また、会議に参加できなかったメンバーがのちほどボードを確認して質問をする場合にも、心理的なハードルが少なくて済み、特定の人に知らせたい場合にはメールやSlackなどのチャットツールにメンションで通知することも可能です。
Miroの利点まとめ
組織レベルでは
組織レベルでは、以下のような効果が期待できます。
- 現場により近い管理職やマネージャーが事業の位置づけや方針を話しやすくなる
- 管理職とメンバーが、事業が置かれている環境と方針について共通認識を持ちやすくなる
- (Miroのテンプレートを利用することで)有用なフレームワークを活用できる従業員が増え、組織レベルが底上げされる
- 事業方針の根拠が明確(参加による腹落ち)になることで納得感が増し、OKRなどの目標管理がスムーズになる
豊富なテンプレート
- PPM分析のようにビジネスで利用するフレームワークのテンプレートを検索し、すぐに活用することができます。
議論を可視化できる
- 参加者が付箋やコメントで書き込むことで、誰かが議事録を書かなくても議論を可視化することができます。
- 同時に書き込める量が多く、指す部分が明瞭なため、音声だけよりも同時にコミュニケーションできる質と量が高まります。
データの一元管理は継続できる
- 使い慣れた表計算ソフトウェアの数値を反映するダッシュボードのような使い方をしながら、自由にコメントや議論、新たな図表などを追加することができます。
質疑応答やTo doの進捗を表現できる
- コメント機能の左上のトグルスイッチを活用すると、解決済みであるかを簡単に示すことができます。
会議にいない人にも質問がしやすい
コメントのメンション機能を活用して、ボード上の質問箇所を明示しながらその場にいない相手に通知することができます。
PPM分析の弱点も知る
PPM分析は優れた手法ですが、見落としがちな注意点もあります。別の記事で詳しくご説明します。
Miroは、世界で8,000万人が利用し、25万以上の企業が採用しているイノベーションワークスペースです。組織が生産的に業務を進めるための多くの機能とエンタープライズ水準のセキュリティを備え、日本では120万人以上に幅広くご利用いただき、TOPIX100の60%以上の企業に採用されています。試験的に導入してみたい、説明を聞いてみたいなどのご要望がありましたら、お気軽にお問合せください。